学校の怪談|東京都
トイレの花子さん
伝承の範囲
東京都内の小学校全般に伝わる。1980年代から都内でも広く流布
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
「花子さん、いますか」——そう三回ノックしてから個室のドアを引く遊びを、東京の小学生は一九八〇年代によくやった。三階、奥から三番目。この組み合わせだけは、どの学校で聞いても不思議と揺れなかった。
返事があった、という子の証言は決まって歯切れが悪い。「たしかにいた気がする」「聞こえたけど扉は開けてない」。逆に「はっきり『はい』と言われて固まった」と胸を張って話す子もいて、その差が話をいっそう面白くした。返事の内容によって現れる姿が変わるという言い方をする子もいた——赤いスカートのままの子もいれば、何も言わずにドアだけ細く開くという子もいる。
この話の一番古い記録は、一九四八年ごろの岩手県にさかのぼるとされる。当時は「三番目の花子さん」という呼び方で、東京とは違う土地で語られていたものが、一九八〇年代のオカルトブームに乗って全国の教室に運ばれてきた。運ばれてくる途中でディテールは擦れ、また足された。東京の学校でよく聞かれる「赤い紙、青い紙をあげましょうか」という別の話とくっついて、選んだ紙の色に染まってしまうという結末がつくこともある。同じ校舎の中に複数の怪談が重なって流れ込んでいた証拠だろう。
三回ノックして黙って待つ、という遊びは今の子どもたちの間でどれほど残っているか分からない。ただ「三階の三番目」という数字の組み合わせだけは、なぜか今も口にする子がいる。