百物語

学校の怪談|東京都

こっくりさんの禁止令

伝承の範囲

東京都内の小中学校。1970年代のブーム期に集団下校・禁止令が相次いだ

記録の扱い
伝承・都市伝説として記録
参照情報
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最終確認
2026-07-09

始まりは一枚の紙と一枚の十円玉だった。鳥居と「はい」「いいえ」、五十音とアラビア数字を書いた紙の上に硬貨を置き、複数人の指をそっと乗せる。問いを発すると、硬貨は誰の意志でもないかのように滑り出す。一九七〇年代、東京の学校でこの遊びが一斉に流行り、そして一斉に禁止された。

きっかけになった出来事はいくつかの学校で記録されている。昼休みに教室の隅で始めた遊びの最中、参加していた児童の一人が過呼吸を起こして倒れた。呼び出された保護者への説明に追われた教員が、校長判断で校内に禁止の通達を出す——という流れは都内の複数校でほぼ同じ形をとった。禁止されたことは、かえって噂に箔をつけた。

さかのぼれば起源は一八八四年、欧米から伝わった「テーブルターニング」だとされる。おひつの蓋を使う和風の形式に変化し、戦後いったん下火になったのち、一九七〇年代に再び火がついた。少年誌の怪奇漫画がこれを取り上げたことも流行を後押しした。正しい手順で終わらせないと霊が離れない、参加した人数分だけ続けなければならない、といった付帯ルールもこの時期に各地でほぼ同時多発的に生まれている。東京では「呼び出した霊の名前を漏らしてはいけない」という独自の禁忌が加わることもあった。

硬貨が動く理由は、指の微細な力が無意識に伝わるからだと説明されている。それでも、動いた瞬間の実感だけは説明を寄せつけない。だから禁止されるほど、広まった。