学校の怪談|大阪府
音楽室のベートーヴェン
伝承の範囲
大阪府内各地の小中学校の音楽室。全国で流布する学校怪談の一変種
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
音楽室という部屋には、他の教室にはない気配がある。楽器が壁際に並び、防音のためか窓が少なく、昼間でもどこか薄暗い。大阪の小学校でも、この部屋に掲げられたベートーヴェンの肖像画をめぐる話が、一九八〇年代後半あたりから語られてきた。夜になると目が光る、あるいは絵そのものが少しずつ動く、というものだ。
なぜベートーヴェンなのかは誰も説明できない。ただ、あの眉間に皺の寄った険しい肖像が、他の作曲家より狙われやすかったことは想像に難くない。楽器と譜面台に囲まれた特別教室という空間の非日常感が、この種の話の器になりやすかったとも言われる。
肖像画と並んで語られたのが、「夜中にピアノが勝手に鳴る」という話だ。大阪市内の複数の小学校で、放課後に音楽室の前を通るとピアノの音がしたという証言が残っている。古いピアノは気温差で弦がわずかに振動することがあり、音がすること自体は説明がつく。それでも児童たちは、物理よりも怪談のほうを信じたがった。
一つの部屋に肖像画とピアノ、二つの怪異が同居していたことになる。夜の音楽室は、それだけ多くの想像力を吸い寄せる場所だったのだろう。