都市伝説|京都府・京都市東山区
幽霊子育飴——死後も子を育てた母
伝承の範囲
六道の辻周辺。「みなとや幽霊子育飴本舗」は現在も営業中(京都市東山区)。創業450年以上とされる
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
夜になると決まって、飴屋に女がひとり現れた。代金を払い、わずかな水飴を買って去っていく。それが七晩続いた。ところが朝になって銭箱を検めると、代金のはずの銭ではなく木の葉が一枚入っているだけだった。飴屋の主人はいぶかしみながらも、女が来るたびに飴を渡し続けた。
ある夜、こっそり後をつけると、女は東山の墓地の中へ入っていき、そのまま姿を消した。代わりに、土の下から赤子の泣き声が聞こえてきたという。慌てて墓を掘り起こすと、中から生きた赤子が出てきた。棺の中で産声を上げていたその子を、すでに死んでいた母親が夜ごと飴で養っていたのだ。
生き延びたこの子は、後に寺の高僧になったとも語られる。恐怖のための話ではなく、死してなお子を思う母の情の物語として読める点が、この伝承を長く生かしてきた。あの世とこの世の行き来がしやすいとされる六道の辻のすぐそばに飴屋があったという地の利も、話に説得力を添えている。
飴屋はその後も「幽霊子育飴」の名で商いを続け、京都市東山区で創業450年以上の店として今も営まれている。漫画家・水木しげるはこの話に深く心を動かされ、幾度となく店に足を運んだと伝わる。死者が子を思う執念が、結果として命をつないだという逆説が、この話を今日まで運んできた。