都市伝説|京都府・京都市下京区
鉄輪の井戸——丑の刻参り発祥の地
伝承の範囲
下京区の細い路地奥に位置する。現在は金網に覆われ水は汲めない。隣接して命婦稲荷神社が祀られている
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
夫の心変わりを知った女は、貴船神社に丑の刻参りをして呪おうとした。これを察した夫が安倍晴明に助けを求めると、晴明は等身大の人形を使った術で応じた。女の呪力はそらされ、力尽きた末にこの井戸のそばで息絶えたとも、ここが元々の住まいだったとも伝わる。細部は語り手によって揺れながらも、鉄輪の井戸はそうした話ごと今日まで伝わってきた場所だ。
この逸話は能楽の謡曲『鉄輪』として形になり、頭に鉄輪をのせ、その足に松明を灯して歩く女の姿を世に広めた。この像はやがて丑の刻参りという行為の「原型」として一般に浸透していく。京都市下京区に残る現在の碑には市の説明板も設置され、伝承の地として公にも認められている。碑が立つ路地は、住宅街の中にひっそりと息をひそめている。
井戸の水にはどんな縁も断ち切る力があるとされ、縁切りを願う人々がひそかに足を運ぶようになったという。今は金網に覆われ、水を汲むことはできない。隣には命婦稲荷神社が祀られており、井戸と社が並んで独特の空気を作っている。案内がなければ見過ごしてしまうこの小さな一角には、かつての執念と現在の願いが幾層にも積もっている。