都市伝説|京都府・宇治市
宇治の橋姫——嫉妬が生んだ鬼女
伝承の範囲
宇治橋西詰に橋姫神社が現存。橋姫は宇治橋の守護神とも、鬼女の怨霊とも語られる二重の性格を持つ
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
待つ女と、祟る女。宇治橋のたもとに立つ橋姫神社の祭神は、まったく違う二つの顔を持っている。
鬼女としての橋姫伝承はこう語る。ある公家の娘が夫の裏切りに傷つき、貴船神社に籠って「鬼にしてほしい」と祈った。神託どおり、松脂で髪を固めて五本の角をつくり、顔を朱に染め、体には丹を塗り、頭には鉄輪をのせてその足に火を灯し、口にも松明をくわえたまま夜の都を駆け抜けて宇治川へ入っていく。21日間、水に浸かり続けた末に彼女は生きながら鬼となり、恨みの相手を次々と傷つけていったという。
燃える鉄輪を頭に載せた女という強烈な絵は、後世の丑の刻参りの姿とも重なり合いながら、嫉妬と呪いを語るときの定番の型になっていった。橋姫神社に今も縁切りの祈願者が絶えないのは、この鬼女のイメージが根強く残っているからだろう。
一方で『源氏物語』が描く橋姫は、恋人の訪れをひたすら待ち続けるだけの女だった。恐ろしさなど微塵もない。ひとつの名前がここまで違う二つの物語を背負うことになった経緯を思うと、女の怒りというものが時代によってどう書き換えられてきたか、その過程そのものが恐ろしくなってくる。