病院の怪談|北海道
雄別炭鉱の病院跡
伝承の範囲
北海道釧路市阿寒町周辺の旧炭鉱跡地。廃病院は近年解体済み
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
人口一万人を超えた時期もあったという雄別炭鉱の街が、釧路市阿寒町の山中にあった。大正八年に採炭が始まり、最盛期には病院や学校、映画館まで揃った一つの町がまるごと山の中にできあがっていた。昭和四十五年の閉山とともに住民は散り散りになり、残された施設だけが山中で朽ちていくことになる。
閉山から数十年が過ぎたころ、廃墟となった病院棟に怪談が集まり始めた。坑内のガス爆発事故で亡くなった人たちを診てきた病院という経歴が、訪れる人の想像力に働きかけた面はあるのだろう、と言えばそれまでだが、深夜に廊下を歩くと足音や声が聞こえた、窓に顔が見えたという証言が繰り返し記録されている。ある著名な霊能者がこの地を訪れ、途中から先へ進めなかったという話も広く知られるようになった。遠くからでも見えた煙突は、廃墟マニア以外にもこの場所の存在を印象づける目印になっていた。
病院棟の建物は近年取り壊され、今は更地が残るのみである。一帯は国有林で、熊の生息域でもある。ネット上には心霊スポットとしての語り口が今も残っているが、語られていた建物自体はもう無い。人が去っても建物は残り、建物が消えても話だけは残る——雄別炭鉱の怪談を特別なものにしているのは、この順番の逆転にあるように思う。