百物語

都市伝説|北海道・札幌市

平和の滝の白い手

伝承の範囲

札幌市西区に位置する落差約10mの滝。昼間は市民の憩いの場として知られる

記録の扱い
伝承・都市伝説として記録
参照情報
2
最終確認
2026-07-09

日が傾き、滝の水音だけが響くようになると、平和の滝は昼間とは別の顔を見せ始める。札幌市西区、落差十メートルのこの滝は休日になれば多くの市民が訪れる憩いの場だが、夜の呼び方は違う。

滝壺のそばに立つと、白く濡れた手が水面から伸びてきて足首をつかまれる感覚に襲われたという体験談が、繰り返し語られてきた。水音に混じって女性のすすり泣きが聞こえた、カメラを構えたら人影のようなものが写り込んでいた、という報告も重なる。とりわけ公衆トイレの付近で焦げた臭いを感じたという証言は地元のオカルト雑誌に取り上げられ、それ以来「滝そのものより怖い」と口にする者も出てきた。

この滝がかつて修験者の修行場だったという由来を挙げ、結界が弱まったことで霊が引き寄せられるようになったと説明する向きが地元にはある。一方で駐車場の一角には、戦時中の強制労働で命を落とした人々を悼む慰霊碑と、戦前に自ら命を絶った女性平和運動家の顕彰碑が並んで立っている。ここに積み重なってきた複数の記憶が、昼と夜の落差をより強くしているようにも思える。

数十年にわたって「札幌一危険な心霊スポット」と呼ばれ続けてきたこの場所で、水音そのものは変わらない。変わるのは、それを聞く側の心細さだけだ。