都市伝説|北海道
摩周湖・霧の中の老婆
伝承の範囲
北海道弟子屈町。世界有数の透明度を持つカルデラ湖。アイヌ語で「山の神の湖」を意味する
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
一年のうち百日以上、この湖は霧に沈む。道東・弟子屈町の摩周湖は世界有数の透明度を誇るカルデラ湖でありながら、外輪山を越えて流れ込む冷気のせいで視界が数十メートルまで狭まる日が珍しくない。アイヌ語でキンタン・カムイ・トー、「山の神の湖」と呼ばれてきた。
伝わる話はこうだ。宗谷地方の二つのコタンが儀礼の夜に争い、一方が敗れた。逃げる道中で孫とはぐれた老婆は、ひとり摩周湖の外輪山にたどり着く。来る日も来る日も孫の帰りを待ち続けた末、老婆はやがて岩となり、湖に浮かぶカムイシュ島になったという。以来、この湖を覆う霧も雨も吹雪も、孫を待ちわびる老婆の涙だと語られてきた。
展望台から湖を眺めていた観光客のなかには、霧の深い日に湖面や島の上に人の姿を見たと話す者がいる。目を凝らすとかき消えるその繰り返しを、老婆の伝承と結びつけて語る人は今も途切れない。何日も晴れ間が見えない時期を「老婆が泣いている」と表現する地元の言い方も、そこから来ている。
晴れた日には湖面が抜けるように青く輝き、霧の日には数メートル先すら見えなくなる。この極端な二面性を持つ湖が、待ち続ける老婆の喜びと悲しみを映していると言われてきたことに、不思議はない。