トンネル・山・廃墟|北海道
常紋トンネルの人柱
伝承の範囲
石北本線・遠軽町と北見市の間に位置する全長507mのトンネル。明治末期に完成
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
遠軽と北見を結ぶ石北本線の山岳区間に、常紋トンネルという全長507メートルほどの単線トンネルがある。大正三年の完成で、工事には当時「タコ」と呼ばれた出稼ぎ労働者が大量に投入された。粗末な食事、一日十二時間を超える労働、監督者による暴力が日常化し、記録に残らない死者が百人を超えたとされる。見せしめとして坑道内に生き埋めにされた者もいると、工事関係者の間では古くから伝わってきた。
長らく噂の域を出なかったこの話に事実の輪郭が加わったのは昭和四十五年のことだ。十勝沖地震で損傷した壁面を修復する工事の最中、待避所を拡張した際、煉瓦壁の奥の砂利の中から頭蓋骨に損傷のある人骨が見つかった。立ったまま埋められた者の骨とみられるその発見は地方紙が報じ、やがて全国に伝わっていった。
以来、このトンネルを通過する列車で火の玉が飛んだ、信号が消えた直後に血まみれの人影が線路上に立っていたとする乗客の証言が断続的に記録されてきた。原因不明の急停車が続いた時期には、乗員の間で「霊が引き止めている」という話が真顔で交わされたという。
トンネルから約一キロ離れた場所には、昭和三十四年建立の歓和地蔵尊がある。その裏手の空き地からはこれまでに約五十体の遺骨が掘り起こされ、毎年六月には供養祭が営まれている。見物客のための行事ではなく、遺された者たちが静かに営む弔いだ。トンネルは今も現役で、列車は暗い坑内を走り抜けている。