トンネル・山・廃墟|北海道・小樽市
オタモイ海岸の龍宮閣
伝承の範囲
小樽市西部の断崖海岸。戦前に開園した遊園地「オタモイ遊園地」と料亭「龍宮閣」の跡地
- 記録の扱い
- 伝承・都市伝説として記録
- 参照情報
- 2件
- 最終確認
- 2026-07-09
小樽市の中心部から北西へ五キロほど行くと、日本海に面した断崖が続くオタモイ海岸に出る。昭和初期、この絶壁の上に実業家が開いたのが「オタモイ遊園地」だ。演芸場や大衆食堂、遊具広場が並び、夏の最盛期には一日数千人が訪れたという。断崖の端に張り出すように建てられた料亭「龍宮閣」は、眼下に広がる日本海の眺めが評判で、遠方からの客も少なくなかった。
しかし1952年、漏電による火災が起き、龍宮閣は全焼した。断崖という地形上、消火活動はほとんど手の打ちようがなかったという。その後遊園地も閉園し、施設は年月とともに朽ちていった。遊歩道は後年の落石事故を受けて閉鎖され、現在では海上からしか跡地を望むことができない。
遊歩道が通れていた時代、夜にこの場所を訪れた者たちが奇妙な体験を語るようになった。廃墟の中で人影が動くのを見た、海風に混じって複数の人声を聞いた、という証言が中心だ。断崖という地形が、かつての賑わいとの落差を際立たせ、訪れた人の想像力に働きかけてきた面はあるだろう。
現在、跡地の近くには約三千体の地蔵が奉られており、関係者と地元住民の手で今も管理が続けられている。繁栄の記憶と廃墟の現実が同じ場所に重なっているこの土地を、訪れた人の多くが「普通の廃墟とは違う」と口にする。かつての賑わいを直接知る人はもう少ないが、三千体の地蔵だけがその跡を留めている。