百物語

都市伝説|東京都・港区

青山のタクシー幽霊

伝承の範囲

青山霊園周辺。昭和初期から週刊誌等で繰り返し取り上げられてきた定番の怪談

記録の扱い
伝承・都市伝説として記録
参照情報
3件
最終確認
2026-10-22

行き先を告げたきり黙り込んだ乗客が、着いた家の玄関で「お金を取ってくる」と言ったまま戻らない。しびれを切らした運転手が呼び鈴を押すと、出てきた家人から「それは亡くなった者です」と告げられる——青山で語られてきたタクシー幽霊譚の、よくある結末の一つだ。

昭和の初め、都心にタクシーが普及し始めた頃からこの手の話は繰り返されてきた。舞台に選ばれることが多いのが青山霊園の周辺で、都心のただ中に霊園があるという場所柄が、話の座りを良くしてきたのだろう。

もう一つの型では、霊園近くで乗せた女性客が黙ったまま目的地に着き、バックミラー越しに確認すると座席には誰もおらず、シートだけが濡れて残っている。週刊誌は夏になるとこの手の話を「体験した運転手の証言」として繰り返し特集し、体験後に運転手が仕事を辞めた、車が故障した、といった尾ひれも付け加えられてきた。証言者の多くは名前を伏せており、裏の取れた例は見当たらないが、話の型はどの時代もほとんど揺らいでいない。

人力車の頃から姿を変えて続く乗り物の怪異譚には、密室・見知らぬ他人との一対一・夜という条件がそろっている。青山という場所が繰り返し名指しされてきたのは、その条件に霊園という舞台装置が重なった結果だろう。理由を一つに決めつけるのも、この手の話には野暮というものだ。

この話で確認できること

資料で確認できること
東京都公園協会は青山霊園の所在地と園内案内を公開している。これは霊園の実在を示す資料であり、怪談の出来事を裏付けるものではない。
確認できないこと
乗客が消える、座席が濡れる、故人が乗っていたという怪異の体験談は、参照資料から事実確認できない。
現在
青山霊園は東京都公園協会が案内する都立霊園。怪談を目的に墓所へ立ち入らず、訪問時は公式の園内案内と注意事項に従う。