百物語

トンネル・山・廃墟|京都府・京都市右京区

清滝トンネルの信号怪談

伝承の範囲

嵯峨野と清滝を結ぶ全長約445mの一方通行路。1929年に愛宕山鉄道の鉄道トンネルとして開通し、廃線後に道路転用された

記録の扱い
伝承・都市伝説として記録
参照情報
2
最終確認
2026-07-09

清滝トンネルに向かう車は、信号が到着した時点ですでに青になっていたら引き返したほうがいい、という言い伝えがある。この一方通行のトンネルには交互通行用の信号があり、対向車が実際に出てきていないのに勝手に青へ変わることがあるという。地元ではこれを「向こうからの合図」と読む向きが根強い。

トンネル内での体験談はいくつもの型に分かれる。白い服の女性がボンネットに落ちてくる。窓ガラスに手形がつく。エンジン音に混じって泣き声や呻き声が聞こえる。似たような心霊スポット怪談の型を踏まえつつも、「赤いトンネル」という独自の通称がついていること自体、この場所固有の体験談が積み重なってきたことを物語っている。

背景には歴史もある。1929年に愛宕山鉄道のトンネルとして開通し、1944年の廃線を経て道路に転用された。かつて参拝者や登山者が行き交ったこの道は、鉄道の廃止という断絶を経て、人気のない山中の暗渠として残った。愛宕山は火伏の神を祀る古い信仰の山で、山中には修験者ゆかりの史跡も点在する。聖地へ向かう道の入口にあたるこのトンネルに怪談が集まりやすいのは、自然な成り行きだったのだろう。確かなことは誰にも分からないままだが。

全長約445メートルの内部は昼間でも照明が乏しく、対向車がいないか確かめながら進む構造そのものが独特の緊張感を生む。山間の細道で交通上のリスクも大きいため、夜間にわざわざ足を運ぶことは勧められない。